商標・知財コラム:峯 唯夫 先生COLUMN

弁理士法人レガート知財事務所 弁理士
峯 唯夫 先生

商標「なみえ焼きそば」を巡るトラブル

■ 商標「なみえ焼きそば」
 浪江町商工会は、地域団体商標「なみえ焼きそば」(登録5934383号。指定商品:第30類 福島県双葉郡浪江町を発祥地とする調理済焼そば,福島県双葉郡浪江町を発祥地とする焼そばのめん)の商標権を保有しています。
 この商標の出願の経緯は以下の通りです。なお、この出願は、浪江町の要請を受けた日本弁理士会が「震災復興プロジェクト」として支援しています。

  • 2013年3月11日 商標登録出願(通常の出願)。指定商品:第30類、第43類
       商標法改正(2014年8月1日施行)により商工会が地域団体商標を出願可能となる。
  • 2014年10月14日 地域団体商標へ出願変更。指定商品:第30類
  • 2017年 3月24日 商標登録
 

 登録の対象に第43類が含まれていない理由は、商標出願の審査時において、浪江町は原発事故による全町避難が続いており、町内に飲食店がない状況だったためであろう。


(出典:特許庁ウェブサイト)

■ 商工会がロイヤリティ徴収の方針を発表
 2025年10月、浪江町商工会は、「なみえ焼そばの商標利用内規」により、「ロイヤリティは、製麺所等0.5%、飲食店2.5%とする」として、その徴収を開始しました(『朝日新聞・デジタル版 』2025年10月12日)。ここから、SNSなどで商工会への非難が湧き上がったようです。
 これを受けて、商工会では同年11月7日に「地域団体商標『なみえ焼そば』に関する報道について」という声明を出し、徴収を撤回すると共に、徴収に至った理由を次のとおり記しています(抜粋)。
 「浪江町商工会青年部が中心となって、提供店マップの作成や小学校でのなみえ焼そば授業、東北やきそばサミットへの参加などをしており、その費用の多くを当会青年部の部費で賄っておりました。
 しかし、浪江町商工会はあくまで浪江町全体のために活動する公的な団体であって、青年部の部費を「なみえ焼そば」のみに使用すると、「なみえ焼そば」を扱っていない他の事業者との間で不公平が生じ得ることもあり、「なみえ焼そば」普及に向けた活動を継続したい反面、資金面では苦戦を強いられておりました。」

■ 地域団体商標とロイヤリティー
 商標法第31条の2は、「地域団体商標に係る商標権を有する組合等の構成員(以下「地域団体構成員」という。)は、当該法人又は当該組合等の定めるところにより、指定商品又は指定役務について団体商標又は地域団体商標に係る登録商標の使用をする権利を有する。」と規定しています。団体構成員には、商標権の発生と同時に自動的に通常使用権が発生するのであり、団体内部の規則において、特定の品質等に関する基準に合致した商品又は役務についてのみ使用が認められるような場合はその規則に従うものと理解されています。「地域団体商標」と「ロイヤリティー」はなじまないようにも思えます。

■ むすび
 「ロイヤリティーの徴収撤回」の大きな理由に、商標権に第43類が含まれていなかったことがあるようです。契約自由ということで考えると、商標権がなくともロイヤルティーの徴収は可能ではあります。
 このトラブルの一番の要因は、商工会と飲食業者とのコミュニケーション不足であるように思います。両者とも、「なみえ焼きそば」という地域資産を活用して浪江町を元気にしようという気持ちは同じでしょう。商工会の費用負担、飲食店の利益、そして町の経済全体で見た利益などを勘案し、検討していくことが、「なみえ焼きそば」継続のために必要ではないかと思う次第です。

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