商標・知財コラム:峯 唯夫 先生COLUMN

弁理士法人レガート知財事務所 弁理士
峯 唯夫 先生

「難を逃れた」郵便ポストと豊川稲荷

■ 現役最古の郵便ポスト
先日、豊川稲荷へ行ってきました。ここに、日本最古の現役郵便ポストがあります。豊川稲荷の最祥殿前に設置されている1912年製の鉄製ポストです。戦前に使用されていた金属製の郵便ポストのほとんどが、軍需品製造のために供出されてコンクリート製に代えられたのですが、豊川稲荷のポストは難を免れて使用され続けました。丸形ポストは今でも地方に残っていますが、根室駅前の丸形ポストは、「黄色」に塗られていました。根室駅はJR最東端の駅ですが、最南端の駅である西大山駅前のポストも丸形・黄色です。

■ 郵便ポストの変遷
日本で郵便制度が始まった1871(明治4)年、同時に郵便ポストも登場していますが、円筒形の丸形ポストの登場は1901(明治34)年、いま残っている丸形ポストは1949(昭和24)年に登場したものです。
その後、1970年に、現在使用されている角形ポストの原型になるものが登場しました。今、街角で見かける角形ポストは、1996年に登場したもののようです。「統一的なシステムデザインとして、7年あまりの歳月を経て世に出た」とのことです(GK Report No12 西澤健追悼特集  https://www.gk-design.co.jp › GKReport_12)。モジュール化されたパーツを組み合わせることで投函口の数や大きさを変えられるようになっています。
郵便ポストは、2020年にロングライフデザイン賞を受賞しています。受賞記録では利用開始1871年4月とされ、「ポストの形」ではなく、明治以来の郵便を支えた「ポストの存在」が評価されています。

■ ロングライフデザイン賞
「ロングライフデザイン賞」はグッドデザイン賞の一つであり、産業デザイン振興会のHPには次のように記されています。「長年にわたり機能と価値が広く認められ、将来においてもそれらを発揮し続けることが望まれるデザインを表彰します。今日の社会を築くことに貢献してきたデザインという視点から、普遍的な機能性と意匠性を備えたデザインと、社会的影響力が高いデザインを開発し長期にわたって提供を継続する事業者の功績を讃えるとともに、次世代のデザインの指標となる水準点を示すことを賞の目的としています。」(https://www.g-mark.org/apply/longlife)。2025年度は11件が選出されています。

■ 豊川稲荷は「お寺」
「稲荷」というと「稲荷神社」を思い浮かべますが、豊川稲荷は曹洞宗の「妙嚴寺」というお寺です。この寺では稲穂を荷い白い狐に跨った「豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)」を祀っていることから、「豊川稲荷」が通称として広まったとのこと。山門と鳥居が左右に並び、鳥居の先に本殿がある神仏混淆の見本のようなお寺です。明治政府の神仏分離令という「難を逃れ」、「お寺」と「神社」が渾然一体の世界を作っています。
「難を逃れた」お寺に、「難を逃れた」郵便ポストが残っている、ということです。
(郵便ポストの変遷、下掲写真は「郵政博物館」https://www.postalmuseum.jp/column/transition/post_10.html)による。)

豊川稲荷のポスト(筆者撮影)

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