弁理士法人レガート知財事務所 弁理士
峯 唯夫 先生
商標「キングタコス」などを巡るトラブル
■ コラムのネタを探していたところ、「キングタコス、ポーク缶のTULIPなど4社が商標登録に「待った」 出願業者「良かれと思い」 沖縄」という記事に接しました(「琉球新報」2025年2月11日。)。4社の商標は、ポーク缶の「TULIP」、ファストフードの「Jef(ジェフ)」、製塩の「シママース」、タコライスの「キングタコス」とのことですが、「キングタコス」に絞って以下記します。
■ 出願業者と出願商標
出願業者は琉球ワークス株式会社。その事業内容は、琉球ワークス社のHPには「ショップ飲食店の管理及び経営、特産品・観光土産品等の小売り・製造卸及びコンサルティング業務、地域観光情報の収集・案内及び発信業務」と書かれています。
この会社が出願した商標は「キングタコス」(標準文字。商願2024-107123)。その指定商品は14、16、18、20、21、24、25、26の8区分であり、「タコライス」は含まれていません。琉球ワークス社に、タコライスを販売する有限会社メランジェの事業を妨害する意図はなかったように思われます。
■ メランジェ社の保有商標
タコライスを販売するメランシュ社は商標に無防備であったかというと、そんなことはなく、しっかりと、以下の登録商標を保有しています。区分は、29、30、43。自己の商売に必要な区分は確保しているといえます。事業をおこなう者として普通の対応でしょう。
■ 琉球ワークス社はなぜ出願したか
メランジェ社は、キングタコスの店舗で、店舗に表示された図柄をステッカーにしてを配布しており、人気を博していたようです。琉球ワークス社はここに目を付けたのではないでしょうか。ステッカーとして人気があるならば、Tシャツやキャップにも展開できると考えるでしょう。
ステッカーを無償で配布する行為は「商標の使用」には該当しないので、琉球ワークス社が登録を受けたところで、メランジェ社としては支障はありません、しかし、人のふんどしで相撲を取られてはかないません。
そこで、4社共同で、琉球ワークス社に出願の取り下げを求めることとなりました。
■ その後
新聞記事には、「琉球ワークスは「意向に反して進めることは全く本意ではない」と説明した。特許庁に出願取り下げ書を提出した。」と記されています。他方メランジェ社は、2024年11月28日に商標「KING TACOS」を第9類など10区分で出願し(商願2024-127687)、2024年12月05日に商標「キングタコス」を29、30、43の3区分で出願しています(商願2024-130833)。上掲図柄の出願はありません。著作権で対応するのでしょうか。
https://ryukyushimpo.jp/news/economics/entry-3973622.html