商標・知財コラム:峯 唯夫 先生COLUMN

弁理士法人レガート知財事務所 弁理士
峯 唯夫 先生

能登の里山文化と地域団体商標

■ 能登半島

能登半島。神のたたりのような状況ですが、ナントカ復興して欲しい。復興に、地域団体商標は活用できるのだろうか、という思いで能登地方の地域団体商標をピックアップしてみました。登録は15件、内農産物が8件といったところ。その中に「能登ふぐ」(商標登録第5823929号)があり、商品の特徴として「能登ふぐは、海藻の繁茂、海洋生物の多種多様性、人々の営みと自然環境との調和など、豊かな自然と文化的な生活が持続していることから2011年度に「世界農業遺産(GIAHS)」に認定された「能登の里山里海」の恵みです。」と書かれています。世界農業遺産は、地域のシステムを認定することで保全につなげていくことを目指しているとのこと。

■ 能登の里山里海

世界農業遺産という言葉は知っていましたが、「能登の里山里海」が指定されていることは知らず。そして、「里山」という懐かしい響きに接し、10年以上前に話題になった「里山資本主義」( 藻谷 浩介・ NHK広島取材班著 角川新書)を思い出しました。この本の問題意識は、世界中の人がグローバルなマネーの恩恵にすがるしかない仕組みはおかしい。少しでも切り崩して「かたぎの経済」に代えられないか、というものであった。
能登の里山里海が世界遺産に指定された所以も、そこで「かたぎの経済」が行われていたからのようだ。サイトには、里山里海の循環経済をイメージさせる図が掲載されています。https://noto-giahs.jp/giahs_top.html

■ 里山の農業

能登・里山・米というと、観光名所にもなっている「棚田」を思い描く人も多いでしょう。「能登棚田米」(商標登録第6096919号)、指定商品は「石川県能登地域の棚田で生産した米」。商品の特徴に「水源近くのきれいな水を使い、農薬の使用量も一般的な使用量の5割減となっているため、里山の生き物たちにもやさしく栽培されたお米です。」と書かれています。崩壊してしまった棚田、農民に復旧を促すのはコクでしょう。
「能登米」(商標登録第6096918号)も登録されています。商品の特徴には「能登全域で定めた統一栽培指針に基づき、化学肥料・農薬の成分を慣行より3割以上削減する「エコ栽培」と、その生産の背景にある「たんぼ」にも焦点をあて、機械除草や農業機械のアイドリングストップ、かかしの設置、生きもの調査など、「能登ならではの環境や生活と調和したたんぼづくり」に取り組んで丁寧に作られた能登産のコシヒカリです。」とあります。
いずれも、地域に根ざしたシステムを背景にした作物であると理解できます。
米以外では、「中島菜」(商標登録第5004794号)指定商品「石川県七尾市中島町産のかぶら菜があります。能登の伝統野菜のようです。

■ 能登の漁業

「能登半島は、三方を海に囲まれ、丘陵地が多く、平野が少ないため、山・里・海が近接している。能登では、里山と里海は、川の流れや人々の暮らしにより密接につながり、一体となって広がっている。また、カキ養殖や海藻の成長には、陸域からの栄養分の流入が大きく影響しているほか、魚付林として海岸沿いの林を大切にする漁業者も多い。 人々は、山で山菜やきのこをとり、田んぼで米を作り、刺し網で魚をとるなど、里山里海双方のめぐみをうまく利用し、半農半漁の生活スタイルを続けてきた。また、かつては冬季に出稼ぎに行く者も多かった。」(https://noto-giahs.jp/lib_suisan_satoumi.html
「能登とり貝」(商標登録第6715257号)、「能登ふぐ」(商標登録第5823929号)の登録があります。

■ 能登丼

「能登丼」(商標登録第5459266号)、指定役務「石川県珠洲市・能登町・穴水町・輪島市における石川県奥能登産の食材を使用した丼物の提供」というのがあります。権利者は、能登丼事業協同組合。「「能登丼」は、石川県奥能登地域(珠洲市、輪島市、穴水町、能登町)で提供する、地元の食材を使った丼です。」とのことで、以下のように定義づけしています。https://www.okunoto-ishikawa.net/modules/donmap/

【食 材】
奥能登産の米を使用しています。
奥能登の水を使用しています。
メイン食材に地場でとれた旬の魚介類 、能登で育まれた肉類・野菜又は地元産の伝統保存食を使用しています。
【食 器】
能登産の器を使用しています。
能登産の箸を使用しています。
箸はお客様にプレゼントいたします。
【調 理】
健康、長寿、ヘルシーにこだわっています。(塩分控えめ、動物性油を使わない、もしくは少量使用)
オリジナリティ(奥能登らしい、店独特のもの)あふれる丼です。
奥能登地域内で調理し、提供いたします。

「能登の里山里海」の集大成のように思われます。

■ むすび

地域団体商標。仕事の上では「あれが登録されている」ということのみに目が行きますが、商品の特徴に目を移すと、地域の文化が見えてきます。地域団体商標を知っているからこそできる支援、というのもあるように思います。

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