商標・知財コラム:工藤 莞司 先生COLUMN

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

注目事件紹介
控訴審で木枯し紋次郎キャラクターは翻案権侵害とされた事例

(令和7年9月24日 知財高裁令和6年(ネ)第10007号 「木枯し紋次郎」著作権侵害控訴事件 原審・令和5年12月7日 東京地裁令和5年(ワ)第70139号)

 事案の概要 亡小説家笹沢左保ことBは、「紋次郎」という名の渡世人を主人公とする「木枯し紋次郎」シリーズの小説を執筆し、本件小説を原作とする漫画(右傾図参照)、テレビドラマ及び映画が制作された。控訴人はBの相続人と独占的利用許諾を受けた控訴人会社で、被控訴人が本件図柄(「紋次郎キャラクター」左傾図参照)を、「被控訴人商品」の外装(ラベル又は外袋)に付して製造販売し、同商品の画像をウェブサイトに掲載することは著作権法侵害等として被控訴人商品の製造販売等の差止め及び廃棄を求め、損害賠償及び遅延損害金の支払を求めた事案で、第一審の東京地裁は棄却し原告が控訴した。

本件画像 本件画像の紋次郎は、①通常のテレビドラマや映画等で用いられるものよりも大きな三度笠をかぶり、②通常のテレビドラマや映画等で用いられるものよりも長く、模様が縦縞模様である道中合羽を身に着け、③細長い楊枝をくわえ、④長脇差を携えているという特徴をすべて兼ね備える者として表現されている。本件テレビ作品の放映前には、上記①ないし④の表現上の 特徴の全てを兼ね備える人物が登場するドラマ、映画等が存在していたとは認められない。そのため、上記①ないし④の表現上の特徴をすべて兼ね備えるという点は、本件画像の創作的な表現をなす部分であり、表現上の本質な特徴をなすものと認められる。

被控訴人図柄 被控訴人図柄の人物は、三度笠をかぶっており、その三度笠は大きなものである。被控訴人図柄の三度笠は、人物の顔の大きさと比べたとき、本件画像の紋次郎のかぶる三度笠よりも更に大きなものであるが、これは、三度笠が大きいものであるという前記①の特徴を被控訴人図柄において強調して表現したことによるものであって、前記①の特徴を感得することを妨げることはなく、むしろ容易にするものといえる。そのため、被控訴人図柄から本件画像の前記①の表現上の特徴(通常のテレビドラマや映画等で用いられるものよりも大きな三度笠をかぶっていること)を直接感得することはできるものと認められる。

本件テレビ作品の紋次郎の画像と被控訴人図柄の対比 本件画像は、本件テレビ作品の紋次郎の画像を具体的に示すものであり、本件画像を被控訴人図柄と対比することにより、本件テレビ作品の紋次郎の画像と被控訴人図柄の対比が明らかにされるから、被控訴人図柄から、本件テレビ作品の紋次郎の画像の創作的な表現をなす部分であり、表現上の本質な特徴をなすものと認められる、前記①ないし④の表現上の特徴をすべて感得し得るものと認められる。

翻案と結論 上記によれば、被控訴人図柄は、・・・本件テレビ作品の紋次郎の画像の複製には当たらない。しかし、被控訴人図柄は、本件テレビ作品の紋次郎の画像に依拠し、その画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に変更を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現したものであり、被控訴人図柄に接する者が本件テレビ作品の紋次郎の画像に係る表現上の本質的な特徴を直接感得することができるといえるから、被控訴人図柄は、本件テレビ作品の紋次郎の画像の翻案であると認められる。

まとめ 先にキャラクターと著作権法雑考として紹介したが、今回は詳報である。知財高裁は、被控訴人の紋次郎キャラクター図柄は、著作権法翻案権の侵害と判断して、控訴を認容し、被控訴人に損害賠償として約5600万円の支払いを命じた。その中で、「翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)第922号 同13年6月28日 民集55巻4号837頁)。」との江差追分事件判例を引用し、被控訴人の紋次郎キャラクター図柄は、本件テレビ作品の紋次郎の画像に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しながら、その紋次郎の画像の表現上の本質的な特徴を直接感得させる別の著作物を創作した行為に該当し、翻案行為であるとした。本高裁判決は元研究会メンバーが探してくれた。現在知財高裁サイトに搭載されている。

メルマガ登録いただくことで、
商標・知財コラムを
定期的にお届けします。

無料

メールマガジンに登録するNEWSLETTER

高度な技術を有した調査員が、
商標・知財への取組みを
サポートします。
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

TEL

03-5296-0033

平日9:00~17:00
Mail form
お問い合わせ