商標・知財コラム:工藤 莞司 先生COLUMN

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

キャラクターと著作権法雑考
=キャラクター木枯し紋次郎お白洲編=

先日、テレビドラマ「木枯し紋次郎」の主人公をまねたキャラクターを駄菓子の容器に無断掲載したとして、原作小説の作者の遺族らが駄菓子メーカー(名古屋市)に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、知財高裁(中平健裁判長)は24日、著作権侵害を認めて約5600万円の賠償を命じた。 1審・東京地裁判決(2023年12月)は請求を棄却しており、遺族側が逆転勝訴した(毎日新聞2025/9/24 )と報じられた。

木枯し紋次郎は、小説家笹沢左保原作の股旅物シリーズの主人公であり、テレビドラマ化、映画化もされた作品で、上州三日月村生まれの紋次郎は、中山道や裏街道を旅する渡世人であった。小説は1971(昭和46)年に発表されたという。1972(昭和47)年には主演中村敦夫でテレビ放映され、私も観た。

現在この判決、知財高裁サイトには見当たらず、以下はネット情報から拾い出したもので、概略である。漫画や小説のキャラクターについては、著作権法の適用は困難とされていたと思う。特定の漫画の一コマとして特定でき、一致するのであれば侵害となるが、それらから飛び出したキャラクター自体には著作権法は適用できないとされていた。このような中で、「立川バスサザエさん事件」(昭和50年5月26日 東京地裁)があり、漫画から抜き出したサザエ、カツオ、ワカメの顔をバスの車体に描いた例は、著作権侵害とされて注目されたが、疑問もあったようである。

紋次郎長脇差届かず 今回の「木枯し紋次郎」事件でも、1審東京地裁は原告の請求を棄却したのは、従来の解釈を踏襲し、私見では、複製権の侵害には当たらないとしたものと思われる。

紋次郎仕留める しかし、控訴審知財高裁では、「被控訴人図柄は、本件テレビ作品の紋次郎の画像に依拠し、その画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に変更を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現したものであり、被控訴人図柄に接する者が本件テレビ作品の紋次郎の画像に係る表現上の本質的な特徴を直接感得することができるといえるから、被控訴人図柄は、本件テレビ作品の紋次郎の画像の翻案であると認められる。」と判断し、「このような本件テレビ作品の紋次郎の画像は、本件小説の二次的著作物であると認められる。」そして、被控訴人図柄から、本件画像の創作的な表現をなす部分であり、表現上の本質な特徴をなすと認められる4点、(1)大きな三度笠をかぶっている、(2)長く、模様が縦縞模様である道中合羽を身に着けている、(3)細長い楊枝をくわえている、(4)長脇差を携えている各点について、控訴審は、被控訴人図柄から本件画像の創作的な表現をなす部分であり、表現上の本質な特徴をなすものと認められる前記(1)ないし(4)の表現上の特徴をすべて感得し得るものと翻案の範囲と判断し、複製権ではなく、同じく著作権者が専有する翻案権の侵害としたようだ。

このような争いや結論に、紋次郎や中村敦夫は、”あっしにはかかわりのないことでござんす”と言っているかもしれない。判決は東京地裁令和5年12月7日、知財高裁令和7年9月24日 令和6(ネ)10007とある。

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