商標・知財コラム:工藤 莞司 先生COLUMN

首都大学東京 法科大学院 元教授 元弁理士 工藤 莞司 先生

商標の基本的登録要件
=出所表示機能の具備が必要=

信用化体には出所表示機能が必要

商標の保護対象は、商標の使用により獲得する業務上の信用(顧客吸引力・Goodwill)である。それは商標の出所表示機能を通じて獲得、蓄積されるもので、信用の化体ともいう。商標は、出所表示機能、品質保証機能及び宣伝広告機能を有するとされるが、その中で、出所表示機能が本質的機能で、基本的なものである。この機能で、商品・役務の出所源を表示し、また、自他の商品・役務を識別するものである。このため、商標法は、出所表示機能の具備を基本的登録要件として、3条に規定している。法は出所表示機能を具備しない商標は、業務上の信用を獲得することはないとみている。

なお、自他商品・役務識別機能とも捉えられるが、製造者・提供者と需要者とを垂直的な立場から商標の役割を見たのが出所表示機能で、競合する各者の商品・役務を横並びで見たのが自他商品・役務識別機能といえ、機能としては同じものである。

最近の裁判例

3条1項1乃至5号は、出所表示機能を具備しない商標を例示したもので、同6号はその総括規定で、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」とは商標の出所表示機能性と同義語である。

最近の裁判例では、以下の商標の出所表示機能の具備が否定されている。
「全国共通お食事券」(指定役務の内容表示 知財高25(行ケ)10193)
「納棺士」(指定役務の質表示 知財高27(行ケ)10061)
「メロンまるごとクリームソーダ」(指定商品の品質・原材料表示 知財高27(行ケ)10232)
「HOKOTABAUM」(指定商品の産地・販売地表示 知財高28(行ケ)10109)

商標登録には出所表示機能の具備がその要件で、採択、使用する商標としては、指定商品・役務とは直接的には繋がらない造語が勧められるのは、このためである。

使用による出所表示機能の獲得

しかし、登録への途が全くないわけではない。使用した結果、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至った商標」(3条2項)は、使用により出所表示機能性を獲得したものとして、例外として扱われる。使用による出所表示機能性獲得の認定、判断のハードルは高く、全国的な認識度が求められる(商標審査基準3条2項2.)。このような商標の例としては、自動車について「TOYOTA」、「HONDA」、「SUZUKI」、農機具に「KUBOTA」等が挙げられる。

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