弁護士法人窪田法律事務所 弁理士 加藤 ちあき 先生
リメイクと商標権侵害
2026年2月26日、フランスのルイ・ヴィトン社が同社の製品をリメイクした業者を相手取り商標権侵害の差止と損害賠償を求めた訴訟で、韓国の最高裁にあたる大法院は、原告勝訴とした二審判決を破棄し特許法院(知財高裁)に差し戻しました。ルイ・ヴィトンのバッグを解体して新たなバッグや財布に作り変えたとしても、個人的使用を目的としたリメイクであれば、原則として商標権侵害にはならないと判示したものです。
本事案は、一審・二審ともルイ・ヴィトン社が勝訴していました。争点となったのは、ルイ・ヴィトンの商標が付されたバッグを解体し別の形のバッグや財布に加工して引き渡す行為が、商標法上の「商標の使用」に当たるかどうかという点でした。ルイ・ヴィトン社は、形を変えても商標が付されている以上、出所表示機能が維持されていると主張し、リメイク業者は所有者の私的利用に過ぎないと反論しました。原審では、リメイクしたバッグや財布は新たな交換価値を有する「商品」に該当し、ルイ・ヴィトンの商標が付されたまま製造・引き渡しがされたとして、差止とともに1500万ウォン(約160万円)の賠償が命じられました。これに対し、大法院は、リメイクしたバッグや財布は市場に置かれるわけではなくリメイクを依頼した所有者に返還される点を重視し、個人的使用の範囲内であれば、商標法上の営業的な「使用」とは評価できないと結論づけました。
リメイク業者は2017~2021年にかけて、客から受け取ったルイ・ヴィトンのバッグを解体し、その布地や金属部品を用いてサイズ・形・用途が異なるバッグや財布を製作し、リメイクの対価として1点当たり10万ウォン(約1万600円)~70万ウォン(約7万4千円)を受け取っていたということです。この業者は40年以上の経験を持つ熟練職人が営む小さな修理工場だそうで、著名な高級ブランドに戦いを挑んだとして、韓国の一般消費者はこの物語にかなり熱くなったと言われています。
大法院は、リメイク業者のサービスが所有者の個人的使用を目的としたものであれば商標権侵害とはならないものの、業者がリメイクの過程を支配・主導して商品を製造・販売するなど、自社の製品として取引市場で流通させたと認められる「特別な事情」がある場合は商標権侵害に該当する可能性があるとの初判断を示しました。ここでいう「特別な事情」とは、リメイクの経緯や内容、商品の目的・形状・数量等の最終的な意思決定の主体、業者が受け取った対価の性格、商品に使用された材料の出所等のさまざまな事情を総合的に考慮して判断すべきとし、その証明責任は商標権者にあるとしました。
この韓国大法院の判決は、いわゆる循環型経済社会における商標使用の法理を明確にした点で評価できるように思います。日本語で、改変、カスタマイズ、アップサイクルと呼ばれる行為も、その再生品の受取人が所有者か第三者かに焦点を当てて判断がされます。本稿では「リメイク」(単に修理したりサイズ直しをしたりするだけでなく新しいデザインのものに加工する)という和製英語を使いましたが、alteration(サイズ直しや微調整)またはcustomization(依頼主の好みを反映した特別仕様)の方が適切なのかもしれません。他方「アップサイクル」という語には、新たな付加価値を持たせて再利用するという意味がありますので、誤解を避けるために、今回の判決紹介にあたっては「リメイク」で統一しました。なお、本コラムで述べられている意見や考察は、あくまで筆者個人の視点と経験に基づくものであり、筆者が所属する組織や団体の公式見解とは異なる場合があります。
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