商標・知財コラム:加藤 ちあき 先生COLUMN

弁護士法人窪田法律事務所 弁理士 加藤 ちあき 先生

ニセモノとの終わらない戦い

私は弁理士ですので、いわゆる並行輸入品と呼ばれる商品は買いません。買わないと心に決めています。商標に携わる者にとって、並行輸入品というのはたとえ真正品であってもニセモノなのです。ジェネリック医薬品も買いません。ジェネリック医薬品の処方はお断りしています。お医者さんに「ジェネリックは困ります、弁理士なんで。」と伝える度に笑われていましたが、去年の終わり頃から「本当にジェネリックじゃなくていいの?」と確認されることが増えました。そうです。ジェネリックを断って先発医薬品を購入すると、毎回500円くらい高くなってしまうのです(私の場合)。弁理士倫理とお財布の間で悩んでいる今日この頃です(笑)。

先日、ママ友とランチを楽しんでいた際、某国の前大統領夫人がニセモノのネックレスを身に着けて国際会議に同行してたらしいというニュースが話題に上りました。実際にはホンモノとニセモノの二つが実在していたことから話がややこしくなっているようですが…。それはさておき、あるママ友から「外国でニセモノをニセモノと分かったうえで買ってお土産として持って帰ってくるのもダメなの?」と質問されました。「海外の旅行先で買った偽ブランド品は、空港の税関で没収されちゃうよ。」と答えると、「えっ?個人でもダメなの?前から?」と驚かれました。2022年10月1日施行の「特許法等の一部を改正する法律」に合わせて改正された関税法第69条の11第2項(輸入してはならない貨物)は、もう少し周知活動が必要そうですね。

財務省の発表によれば、昨年(2024年)の税関における知的財産侵害物品の差止状況輸入差止件数は33,019件で、公表を開始した昭和62年(1987年)以来、過去最多を更新したそうです。AIによる模倣品検知システム導入のニュースもありましたので、差止精度が急速に向上しているのかもしれません。仕出国(地域)別では、中国が全体の80.6%を占めています。正規品の価格で計算しますと、約282億円相当とのことで、事態は深刻ですね。対象となった物品はいわゆる偽ブランド品の衣服が最も多いようですが、なかには加熱式たばこや浄水器のカートリッジ、バッテリーなど健康や安全を脅かすものも含まれていたようです。

私自身は東京税関の専門委員というのを拝命しているのですが、個人的な感覚ですと、以前多かった著作権侵害事案よりも近年は商標権侵害による差止が増えているように思います。税関の審査官の方にお話をお聞きしますと、見た目の類似性が判断基準となる商標権の重要性が再認識されているとのことでした。このお話は、商標が単なる商品の名前ではなく、消費者との信頼関係を守る盾となっていることを改めて示している気がします。

以上

メルマガ登録いただくことで、
商標・知財コラムを
定期的にお届けします。

無料

メールマガジンに登録するNEWSLETTER

高度な技術を有した調査員が、
商標・知財への取組みを
サポートします。
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

TEL

03-5296-0033

平日9:00~17:00
Mail form
お問い合わせ