商標・知財コラム:加藤 ちあき 先生COLUMN

弁護士法人窪田法律事務所 弁理士 加藤 ちあき 先生

白黒? カラー? それとも透明?

商標の仕事をしたことのある人なら誰でも、白黒で出願した方がいいのか?それともカラーか? どちらがいいんだろうと悩んだことが必ずあるはずです。例えば会社のロゴマーク。図形が含まれていたりシンボルカラーが施されていたり、海外出願も視野に入れていたり…。そんなとき、白黒とカラー、どちらで出願したら良いのでしょうか?

日本の商標法には、いわゆる新しいタイプの商標を除き、色彩を主張するという概念がありません。したがって、文字・図形・記号等と色彩の結合からなる商標を出願する場合に「この部分は〇色なんです!」と主張する必要はないことになっています(というか、できません)。ただし、これには唯一の例外があります。それは、「白」です。

商標法第5条第6項にはこのように規定されています。「商標登録を受けようとする商標を記載した部分のうち商標登録を受けようとする商標を記載する欄の色彩と同一の色彩である部分は、その商標の一部でないものとみなす。ただし、色彩を付すべき範囲を明らかにしてその欄の色彩と同一の色彩を付すべき旨を表示した部分については、この限りでない。」

例えば、以下のような商標を出願した場合に、何も意思表示がなければ、商標中の白い部分は「その商標の一部でないものと」みなしますよ、ということが前段に書かれています。後段には、ただし、商標中の白い部分を「ここは白です」と表示してくれれば、そこには白い色が塗ってある(その白色を商標の一部である)と扱いますよ、と規定されているのです。

これはどういうことかといいますと、例えば、ガラスのドアに上記商標を貼った場合、白い部分は透明でガラスの向こうが見えてしまうのか?それとも ガラスの上でも 白いまま表示されるのか?ということを問うています。「ガラスのドアに貼った場合、どうなりますか?」というのは、商標弁理士の定番の質問なので、問いかけられた方も多くいらっしゃるのではないかと思います。テレビ番組で提供スポンサー名が示される場面でも、白色を主張している企業と、透明な企業とがあります(笑)機会がありましたら、ぜひ注目してみてください。

このコラムを読んでいるうちに、あれ?ウチの商標は大丈夫だろうか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。透明じゃなくて白い場合には、「商標法第5条第6項ただし書の適用」と記載した「説明書」という書面を願書とともに提出しなければならない、ということを覚えておいていただけると幸いです。詳細は商標審査便覧25.01にあります。なお、商標公報には「【商標法第5条色彩に関するただし書適用】色彩の指定がありますので、原本を参照してください」という文章が記載されます。

さて、最初の質問に戻りましょう。白黒とカラー、どちらで出願するのが良いのか?でしたね。これは、その商標中に施された色をどのくらい重要に思っていらっしゃるのか?ということにかかってきます。そして、白黒とカラー、どちらをどのくらいの頻度で利用するのかの確認も必要です。例えば、「常にカラーで使用しモノクロでは決して使用しない」という標章管理規定を社内で有しているのに、白黒で出願する必要はないと思います。一方、白黒と赤黒とを半々で使用中だけど この赤がわが社にとっては重要なんです、といった場合には、ぜひ赤黒で出願しましょう。日本には、色彩のみが異なる類似商標を一定の場合に同一商標と扱う特例(商標法第70条)がありますので、この特例をおおいに利用しましょう。

なお、先の例の後者(赤黒)の日本登録を基にマドプロを利用してアメリカ出願する場合、実はアメリカでは白黒をよく使い赤はあまり使わないといったケースでは、アメリカ特許商標庁の審査の過程で商標を赤黒から白黒に変更することが可能です。ただし、この方法は、本国(日本)で色彩の主張をしていないこと、及び、マドプロの願書(MM2の8番)で色彩の主張をしていないことが必要となります。アメリカは日本と異なり白黒の商標がすべての色の使用をカバーしますので、この点は覚えておかれるとよいかもしれません。透明な場合にも利用できる方法ですね。

以上

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