商標・知財コラム:土肥 一史 先生COLUMN

一橋大学 名誉教授・弁護士 土肥 一史 先生

Spezi(シュペッチ)をご存じですか

Speziとは、レモネードとコーラを混ぜ合わせたアルコール・フリー飲料です。泡も若干立ち、見た目もビールに似てなくはないので、飲み会などで下戸に重宝されるようです。ちなみに、レモネードにビールを混ぜたRadlerというビールは、アルコール分も2~3%と低く、名前の通り自転車乗り(Radler)の飲み物として生まれたものですが、日本では飲酒運転になるかもしれません。

Speziは、元々はアウグスブルグのリーゲレ(Riegele)というビール会社によって創出されましたが、ミュンヘンの大手ビール会社Paulanerがライセンスを受けることで製造販売を可能にしました。その後、両者間にこのライセンス契約をめぐって紛争が生じたものの、Paulanerが勝訴し今日に至っており、PaulanerのSpeziは元祖をしのぐ売り上げに達している模様です。

現在Paulanerは、紫、ピンク、赤、オレンジそして黄を横波型に構成する5色の色彩(”Fünf-Farben-Welle”:下図A;EU trademark 018282231)を商標登録し、Speziのラベルに使用しています。他方、ドイツ・ザールランドにあるビール会社Karlsberg(デンマークのCarlsbergとは関係ない)も同様の飲料Brauerlimoを販売しており、そのラベルに5色の色彩を縦長の短冊形に並べ、その上に被告の商品表示KarlsbergとBrauerlimoを二段に配して(下図B)使用していました。

Paulanerは、その登録商標とKarlsbergのBrauerlimoの上記ラベルとが混同するおそれがあるとして、ミュンヘン第1地裁に商標権侵害を理由に訴えを提起しました。被告はレモネード商品部門においては色彩豊かな表示ラベルが通例使用されているとして原告商標の識別力の有無を争うほかに、両者の色彩商標間の類似性はないと主張したようですが、同地裁第33民事部はこれを退け、昨年3月、ドイツ国内での被告ラベルの使用を禁止しました。

本件で、裁判所は「出所表示としての使用かどうかの判断にあたっては、他の標識に対して、当該色彩自体の特異性並びに絶対的又は相対的なその使用の範囲、位置及び程度が考慮される。取引者・需要者が、問題の商品又はサービス部門において、表示として色彩が一般的に使用される慣行が認められるのか、あるいは色彩それ自体が出所表示として理解されるように周知なものとなっていることが求められる」としました。この判決は、色彩商標と文字商標の結合商標あるいは複数商標の使用に関する論点や取引の実情との関係で興味深いものがあるように思います。

本判決は確定していませんが、PaulanerはSpeziの使用する5色の色彩商標の保護には殊の外注力しており、本判決から5か月後、ドイツ最大のリキュールメーカーBerentzenのレモネードとコーラ混合飲料Mio-Mioでも、この色彩商標に基づく侵害訴訟で、同じ裁判所から勝訴判決を受けています。

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