商標・知財コラム:弁理士法人レガート知財事務所 弁理士 峯 唯夫 先生

東海道新幹線再生アルミ

■ 新幹線車両がバットに
2023年の鉄道記念日(10月14日)に、ミズノから、東海道新幹線700系車両の再生アルミから製造されたバットが発売されました。東海道新幹線再生アルミを約95%使用したものです。1400本の販売本数は、ほとんどが予約で売り切れたとのこと。
アルミは融点が低く、再生に適した素材とされています。「東海道新幹線再生アルミ」は、アルミを新製する場合に比べ、製造時に必要なエネルギーを抑えられるため、CO2排出量を97%削減し、環境への負荷を軽減することがでるとのこと(社団法人日本アルミニウム協会算出データ)。そして、新幹線車両のみを素材とした再生アルミは、品質が一定しており、トレーサビリティーが可能であるという利点もあります。

■ 新幹線車両の再生は難しい
新幹線車両の再生、溶かせばいいんじゃないの、と思うかもしれませんがそうはいきません。新幹線車両は「ダブルスキン構造」といって、壁は内外二枚のアルミ押出材で構成され、二枚の間隙部分に配線などが収められている。これを溶かすと、アルミと配線などが一緒に溶けてしまい、アルミだけを取り出すことができません。そのために、鉄を作るときの添加剤等として使用されてきました。そこで、JR東海のグループ企業である東京ステーション開発は、アルミと異物との融点及び比重の違いを利用して、アルミと異物とを分離する手法を考案し、純度の高いアルミの再生に成功しました(特許第6786689 号)。
なお、アルミ車両の再生としては東京メトロ05系の例がありますが、タネ車である5000系電車はダブルスキン構造ではなく、表面のみがアルミです。

■ デビューは2020年
新幹線再生アルミのデビューは、2020年8月にリニューアルした商業施設「東京ギフトパレット」。ここの建材や装飾、スターバックスの什器などに使用されました。2021年度のグッドデザイン賞(商業施設)を受賞し、「次世代の商環境を作るにあたりリサイクル素材を使うことで、新幹線ならではの高品質を活かし付加価値の高いサステナブルな施設となった。」と評価されています。

https://www.g-mark.org/gallery/winners/9e5bb577-803d-11ed-af7e-0242ac130002?companies=1563541d-ae70-4dfb-ba7c-ab1c83b90dc7&years=2021

■ 新幹線から新幹線へ
新幹線再生アルミは、現在、新幹線車両N700Sの荷物棚などに採用され、「新幹線から新幹線」のリサイクルが部分的に実現していますが、今後はN700Sの屋根全体の約3割を再生アルミに置き換える計画であり、「新幹線から新幹線」のリサイクルは一層充実します。また、リニア新幹線の駅でも使用される予定とのこと。
リサイクルが進むことで、環境負荷の小さい新幹線が、一層サステナブルな交通機関になることを期待したいものです。

 

弁理士法人レガート知財事務所 弁理士
峯 唯夫

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