商標・知財コラム:特許業務法人レガート知財事務所 所長・弁理士 峯 唯夫 先生

中国で「ブランドデー」を制定

中国では、5月10日を「中国ブランドデー」に制定したとのこと。以下、「人民網日本語版」2017年05月10日からの引用です。

国務院の承認を経て、2017年より、毎年5月10日を「中国ブランドデー」とすることが決まった。今年のブランドデーのテーマは、「供給側構造改革の深化、独自ブランドの発展新時代の全面的スタート」だ。新華社が伝えた。

国家発展改革委員会産業協調司の王東・巡視員は9日に行われた中国ブランドデーのメディア向けブリーフィングで、「『中国ブランドデー』の設置は、第1に社会全体の共通認識を結集し、独自ブランドへの意識を高め、独自ブランドを育成し発展させ、独自ブランドの保護を強化し、供給構造と需要構造のバージョンアップを助ける上でプラスになる。第2に独自ブランドを宣伝する良好なムードづくりをし、独自ブランドの影響力を拡大し、独自ブランド製品の消費への信頼感を育てる上でプラスになる。第3に独自ブランド交流プラットフォームを構築し、独自ブランドの発展成果を展示し、有名な独自ブランドの成功体験を共有し、独自ブランドの文化的な内容を伝え、中国独自ブランドの良好なイメージを確立する上でプラスになる」と述べた。(編集KS)

── http://j.people.com.cn/n3/2017/0510/c94476-9213346.html

商標管理に関しての具体的な施策としては、「地方の商標出願受理窓口の増設、商標のオンライン出願推進、電子登録証の使用普及等に注力し、著名商標や老舗の登録商標の保護強化や著名ブランドの合法権益の保護拡大等にも取り組むとした。」とのこと。(出典「BTMU CHINA WEEKLY」2017年5月31日( http://www.bk.mufg.jp/report/inschiweek/417053101.pdf ))

中国と言えば「模倣」というイメージが強いが、中国発の「ブランド」(とりあえず名が通っている「商標」)も「Lenovo」「Huawei」「アリババ」などいくつか存在する。「ブランドデー」を制定してブランドの強化を図る施策を実施することによって、「模倣の国」というイメージを払拭し、世界に通用する産業を振興しようということであろう。

この記事に接して、日本も昔同じことをやってたな~、と思い当たったのが1957年の「グッドデザイン賞(Gマーク)制度」の創設、と「輸出検査法の制定」、59年の「輸出品デザイン法」の制定に始まる、「模倣」を排除して優れた独自のデザインの開発に向けた施策。「デザインの日」(10月1日)の制定は90年。そして、97年に「輸出検査法」と「輸出品デザイン法」は、役割を終えたということで廃止された。
なお、Gマーク選定商品第1号は「35mmカメラ キヤノン L-1」、有名な東芝の「電気釜」は翌年の受賞である。

東芝の「電気釜」
出典:公益財団法人日本デザイン振興会HP

輸出検査法は、「輸出検査を行うことによつて、輸出品の声価の維持及び向上を図り、もつて輸出貿易の健全な発達に寄与することを目的とする。」もの。
輸出品デザイン法は、「輸出品のデザインの登録及び認定を行うとともに、あわせて輸出品に附される商標の認定を行うことにより、これらの模倣を防止し、もつて輸出貿易の健全な発達に寄与することを目的とする。」ものであって、輸出品のデザインを対象とする登録制度を備えていた。この名残が、生活用品振興センターなどで行われている、デザインの自主登録制度である。

1960年代の輸出振興策として、「見本市船・さくら丸」が筆者の記憶に残っている。60年から10年以上にわたり、世界を巡航したようである。

中国の「ブランドデー」における「ブランド」は「商標」だけを指すものではないであろう。ブランドとは、筆者の理解では「商品・サービスを提供する人とその需要者との間の信頼関係」であり、技術・デザインなどでその素地が創られ、それを「商標」が見える化しているということができる。
中国は「ブランドデー」の制定によって、技術・デザインなどで独自性のある商品・サービスを開発し、需要者との間で信頼関係を築き、中国発の「ブランド」として世界に展開することを宣言したといえるのではないだろうか。

 

特許業務法人レガート知財事務所 所長・弁理士
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