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知的財産権法における不正、商標法の場合

◇知的財産権法における不正の問題、これは、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法、著作権法その他法上幅広く多くの問題が存在する。実際、各知的財産権の侵害、違法コピー、営業秘密等情報漏洩その他多くの問題が思い浮かぶところである。

その中で公益性の強いとされる商標法の場合をみてみたい。

◇まず商標権の侵害については、その公益性の強さからも非親告罪となっているとされていたが、被害者の告訴がなくとも検察官は公訴を提起できてしまう。なお、特許権の侵害については、昔は親告罪であったが、改正により非親告罪となっており、この点でも刑事罰は強化されてきているとみられる。

◇また、よく見かける(R)(○の中にR、マルアール)は、登録商標(registered trademark)の表示であり、TMは商品商標(trademark)、SMは役務商標(service mark)の表示で未登録商標に使用される。これらの表示は、もともと米国で使われたりしているものであるが、特に(R)は、日本でもよく見かける。しかし、日本では、登録商標を付するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない(商標法73条)とあるようにこれは訓示規定であり、必ずそうしなければならないというものでもない。そして、商標登録表示の具体的方法は、登録商標の文字及びその登録番号又は国際登録番号とされている(同法施行規則17条)ので、それに従えば「登録商標第○○○○○号」というような表示となる。

◇では、このような表示が虚偽表示の場合はどうなるのか。登録されていないのに登録表示や紛らわしい表示をすることは禁止されている(同法74条)し、刑事罰の適用(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もある(同法80条)。そして、従業者が会社の業務に関して虚偽表示の規定に違反した場合には、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑(一億円以下の罰金刑)が科されることになる(同法82条)というように両罰規定で厳しいものとなっている。なお、たまに特許庁に出願されたデータで見かけることがあるが、登録前に予め(R)を付けて出願されているものがある。不謹慎とは思いつつ「これじゃ、虚偽表示ではないか」と思えて笑ってしまうこともある。

◇そして、商標権者の不正使用による取消審判(同法51条)や使用権者(ライセンシー)による不正使用(同法53条)の規定が存在し、商標登録が取消審判により取り消される場合がある。これらは、不正な使用により誤認混同を生じさせた場合に需要者の利益が害されるため規定されているとみられるが、制裁的色彩が強いものとなっている。

◇このように商標法の場合を概観しただけでも、いくつもの厳しい規定があるが、知的財産権法における不正の諸問題については、予め知識としてまとめておかないと、いきなり犯罪者として処罰されることもあり得るのである。「法の不知」で処罰は逃れられないというような言葉も刑法ではあったはずであるが、法を知らなかったではすまないのである。

◇来年には不正と知財を絡めたセミナーがACFE Japan主催で開催される予定であるが、専門家からのまとまった知識を吸収する良い機会とも思われる。(當間)

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