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商標の拒絶理由

◇商標登録出願については、出願すればそのまま登録になるというものではない。出願の実体面についても特許庁審査官により審査され、拒絶の理由が発見されると、拒絶理由通知が出願人に発送される。商標の場合は40日間の期間が指定され意見書提出の機会が与えられる。いきなり審査の最終的な判断である拒絶査定はできず、まずは意見を申し述べる機会が与えられているのは、商標法条約でも述べるところである。この期間内であれば1回だけでなく、2回、3回と意見書を提出してもよいと考えられるが、あまりそのような事例は聞かない。

◇審査官の実体審査では、先ず、商標法3条の識別力といわれるものをみて、その後、同法4条をみるのが、建前となっているというか、理論的には本当は逆はあり得ない。なぜかというと第3条でみるのが出願されたものが商標として認められるかという最も根本的な部分であり、それを通り越して、4条1項11号の先登録の同一・類似の商標であるか否かの審査にいきなり行くのは、商標とは認められないものについて、商標の類似を判断してもナンセンスといえるわけである。しかし、実際には、4条の同一類似があった場合は、3条の商標と認められるか否かの判断より、4条1項11号の拒絶理由の方が出しやすいので、審査が逆になることはある。

◇では、この商標として認められるか否か、3条1項に何があるのかというと、1号商品・役務の普通名称、2号商品・役務の慣用商標、3号商品・役務の品質表示等の記述的商標、4号ありふれた氏・名称、5号極めて簡単で、かつ、ありふれたもの、6号前号までの他、識別力ないもの が規定されている。

◇1号は、例えば、「時計」という商品に「時計」と表示したとしてもだめで、非常に分かりやすいためかそのような出願はあまりみない。 拒絶理由で一番多いのは、3号である。これは、その商品がどのようなものか商標から感じ取れれば、消費者も購入しやすいし、また覚えやすくリピートもしやすいので、企業が品質等表示の拒絶ぎりぎりを狙って出願してくるのである。例えば、「自動車」という商品に「(デザイン化されていない)デラックス」という品質表示が仮に登録になったとしたら、それは非常に価値の高いものであり、登録になった国で唯一その商標権者(厳密にはライセンシーも)のみが自動車に「デラックス」という商標を使えるということになる。このような表示を一個人や企業に独占させるのは社会的影響も大きいので、通常は拒絶になる。

◇ついでにいうと、商標の価値評価算定は、特許より難しいといわれる(商標は、商標権者が変わると価値が変動するが、特許は特許権者が変わっても同様の価値を維持し得るためだと思われる)が、私は、造語商標という識別力の強い(strong mark)と品質等表示ぎりぎりで登録となった(weak mark)が両極端であるがそれぞれ価値の高いものと考えるのである。多くの企業が狙うのは品質等表示ぎりぎりのいかにも拒絶になりそうな商標である。

◇それと、この3条1項3号と4条1項16号の抱き合わせの拒絶理由もかなり多く、忘れてはならない重要なものである。4条1項16号は、商品の品質又は役務の質の誤認について規定する。例えば、商品「シャンプー」に「たまごシャンプー」という商標では、本当にたまご入りのシャンプーであれば3条1項3号の原材料の表示にもなり得るし、また、たまごの入っていないシャンプーであれば4条1項16号の商品の品質の誤認を生じるおそれもあるのであり、抱き合わせで拒絶理由となり得るのである。また16号についていえば、例えば、指定商品「洋服」に「イギリス」という文字を含んだ商標では、イギリス製以外の洋服には品質の誤認を生じるおそれがあるが、このような場合、指定商品の記載を「イギリス製の洋服」と権利範囲を狭める減縮補正をすれば拒絶理由は解消することになる。 (當間)

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